『ジョーカー:フォリア・ドゥ』感想・考察(ネタバレなし)


“狂気のラブストーリー”として確立した続編

『ジョーカー:フォリア・ドゥ』は、前作の延長線上にあるように見えてまったく別ジャンルの挑戦作。

本作は、

  • 二人のラブストーリー
  • 心理サスペンス
  • 主観的世界のミュージカル化
  • アイデンティティの揺れ
  • 孤独の共鳴

これらが複雑に絡み合った“心理体験映画”。

前作の社会批評とは違う方向ですが、アーサーというひとりの男の“内なる世界”を極限まで描いた非常に挑戦的な作品です。


作品の内容(ネタバレなし)

『ジョーカー:フォリア・ドゥ』は前作のその後を描きます。

舞台は、主人公アーサーが収容されている アーカム州立病院
前作で“事件”を起こしたあと、彼は収監され静かで単調な日々を送っています。

そんな中、彼の前に現れるのがもう一人の重要人物、ハーリー・クイン

精神科医としてアーサーと関わり始める彼女ですが、
アーサーと過ごすうちに、

  • 彼の孤独に共感し
  • 彼の世界に惹かれ
  • 彼の痛みに寄り添うように

次第に 「アーサーと同じ世界の見え方」を共有していく ようになります。

二人はいつしか特別な関係になり、
アーサーの中の“別の現実”がハーリーと共に形を成し始めます。

この作品の大きな特徴は、
アーサーの内なる世界(妄想・幻想・願望)が ミュージカルシーンとして視覚化される こと。

  • 刑務所の薄暗い廊下が突然ステージに変わったり
  • 二人だけの世界が華やかな舞台になる
  • 感情の高まりが歌やダンスに変換される

彼の主観をそのまま“体験する”形で物語を追う作品になっています。

つまり本作は「現実」と「幻想」の境界がずっと揺らぎ続ける物語。

その中で

  • アーサーが何を信じ
  • ハーリーがどう共鳴し
  • 二人がどこへ向かうのか

という“心理と関係性”が物語の中心となっています。


作品情報(基本データ)

公開年/監督/ジャンル/上映時間

  • 公開年:2024年
  • 監督:トッド・フィリップス
  • ジャンル:サイコスリラー/ミュージカル/ドラマ
  • 上映時間:138分前後

前作『ジョーカー』(2019)の“続編”でありながら、
本作は 心理ミュージカル という大胆な方向へ転換。
アーサーとハーリーの“狂気のデュエット”を中心に展開します。

なぜ世界中で話題になったか?

  • ホアキン・フェニックス × レディー・ガガという圧倒的キャスト
  • 物語の大半が“ミュージカル表現”で語られるという挑戦
  • 前作とはまったく異なる“主観的世界”の描写方法
  • “フォリア・ドゥ(共有精神病)”という稀な精神医学テーマ
  • DC映画でありながらアート色が極端に強い

”狂気の主観世界”を描く革新性

なぜ主観的・幻想的描写が重要なのか?

アーカム収容所の閉鎖的な現実とは裏腹に、
アーサーの内側では常に色鮮やかな“別の世界”が広がっています。

  • 誰にも理解されない孤独
  • 愛されたい渇望
  • 認められたい願望

これらが爆発すると、
アーサーの心の世界=ミュージカル空間 として現れる。

“アーサーの感情と視点”で世界を見ることになる作品です。

「現実と幻想の境界」を曖昧にする効果

アーサーの主観に入り込み続ける構造のため、
「何が本当に起きているのか?」という不確かさに揺られます。

これは

フォリア・ドゥ(共有精神病)
→ 二人が共に“同じ妄想世界”を共有する症状

という原題通りのテーマを体験させる設計になっています。


キャラクターと生い立ち

アーサー・フレック(ジョーカー)

彼は相変わらず孤独で、社会から隔離され続けていた。

前作で“ジョーカー”として覚醒したはずが、
今作では再び自問します。

  • 自分は何者なのか
  • なぜ誰も理解してくれないのか
  • 自分が信じている世界は本当なのか

この揺れこそ物語の中心。

ハーリー・クイン(レディー・ガガ)

ハーリーはアーサーと出会うことで、
彼の痛みを“自分のもの”として感じはじめます。

アーサーの孤独はハーリーの孤独と共鳴し、
彼女もまた現実と幻想の境界を越えていく。

二人が共有する“狂気の世界”が、
映画の舞台となるミュージカル空間を作り上げていきます。


映像演出とミュージカル表現の圧倒的存在感

ミュージカルシーンはアーサーの“心の声”

本作は、ミュージカルシーンを

感情の爆発=表現の手段

として使っています。

  • アーサーの願望
  • ハーリーの愛情
  • 二人の狂気
  • 世界への怒り

これらが歌と映像で一気に噴出する瞬間は圧巻。

現実パートとの落差

幻想シーンの華やかさとの対比で、
アーカムの冷たさ・虚無感がより強調されます。

そのギャップが“アーサーの精神状態を肌で感じさせる構造になっています。


この映画が投げかけるメッセージ

”「愛」と「支配」は紙一重”

アーサーとハーリーは、
お互いを救っているようで壊し合っている。

映画が問いかけるのは、

“愛”は二人を救うのか?
それとも二人を破滅させる幻想なのか?

という残酷なテーマ。

社会が生む孤立と“狂気の正当化”

前作にあった社会批評は影を潜め、
今作では“個としてのアーサー”が徹底的に描かれます。

  • 社会を憎む
  • 理解されない苦しみ
  • 孤独の中で唯一寄り添う存在(ハーリー)

このバランスが非常に繊細で、
観客は「共感」と「恐怖」の間を揺さぶられます。


こんな人におすすめ

  • 前作『ジョーカー』が好き
  • 心理劇・心理サスペンスが好き
  • ミュージカル×ダークドラマに興味がある
  • 狂気系キャラの内面を深掘りした作品が好き
  • 恋愛×破滅の物語に惹かれる

配信状況

  • DMM TV:配信時期は未定。
  • U-NEXT:新作レンタルが最速配信される可能性あり
  • Netflix:配信は期待薄(劇場系の権利が複雑なため)
▶ 『ジョーカー:フォリア・ドゥ』の配信状況をチェック  

※レンタル解禁され次第こちらに反映

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